肥満 
出典:Newton2005.5その他
 日本人の3人に1人は、肥満に関係する遺伝子に変異があり、肥満しやすい体質。
成人男性の役3割は肥満。男性肥満者は、1982年に比べ、2002年では1.5倍に増加している。


 肥満遺伝子:肥満遺伝子の一つob遺伝子(肥満遺伝子)は、レプチンの産生を調節する。レプチンは脂肪細胞がつくるタンパク質です。レプチンは脳へ移動し、食欲を調整する視床下部の受容体に作用します。レプチンは、食物の摂取を減らし、燃焼されるカロリー(エネルギー)の量を増やせという指示を伝えます。これまでに、マウスとごく少数の小児での研究から、ob遺伝子の突然変異がレプチンの産生を阻害し、重度の肥満を引き起こします。(引用:メルクマニュアル家庭版)
   β3アドレナリン受容体遺伝子:β3アドレナリン受容体は交感神経末端から分泌されるノルアドレナリンを受け取るための受容体である。β3アドレナリン受容体にノルアドレナリンが結合すると、白色脂肪細胞では、中性脂肪が分解され、遊離脂肪酸となり、血管を通じて褐色脂肪細胞へ移動する。褐色脂肪細胞では、遊離脂肪酸を分解して熱を発生し、体外へ放出する。従ってβ3アドレナリン受容体遺伝子に変異があると、1日あたり200キロカロリー節約され、年間で10kg以上太りやすくなる。日本人の34%が変異している。
   UCP1:褐色脂肪細胞で熱の発生を促している。この遺伝子が変異していると、1日あたり100キロカロリー節約され、年間で5kg以上太りやすくなる。日本人肥満女性の24%が変異している。
 BMI (Body Mass Index 体重kg/身長m/身長m)が18.5未満は低体重、18.5以上25未満は普通体重、25以上を肥満と呼ぶ。
BMI 25以上だと、死の四重奏(肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症の合併)になる確率が2倍になる。
アメリカ人の場合、BMI30以上で肥満としているが、日本人のほうが肥満に対して合併症が出やすい。

軽度肥満:   BMI25以上30未満
中等度肥満: BMI30以上40未満
重度肥満:   BMI40以上

白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞

  白色脂肪細胞:細胞の中の空洞にたくさんの脂肪(油滴)を蓄えることができる。血管から取り込まれたブドウ糖は、中性脂肪に変化し、脂肪細胞の中の空洞に油滴として蓄えられる。
  褐色脂肪細胞:ミトコンドリアをたくさん持ち、小さな油滴が複数ある。大きさは白色脂肪細胞の10分の1。ミトコンドリアが脂肪が分解されてできた遊離脂肪酸を消費して熱に変える。褐色脂肪細胞は首筋や肩甲骨の周辺にあり、脂肪を燃焼させるとともに、熱を体外へ逃がすラジエターの役目を果たしています。
 インシュリンの働き 食べ物を食べると、炭水化物などはブドウ糖となり、小腸から吸収されて血管に入る。血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなると、インシュリンが膵臓で分泌され体内をめぐる。白色細胞にはインシュリン受容体があり、インシュリンと結合すると、白色細胞内の「糖輸送担体W」にシグナルを伝達する。シグナルを受け取った「糖輸送担体W」は白色脂肪細胞の表面に移動し、血管から細胞質中にブドウ糖を取り込む。血管から取り込まれたブドウ糖は、中性脂肪に変化し、脂肪細胞の中の空洞に油滴として溜め込まれる。
 肪細胞の内分泌器官としての働き 脂肪細胞は人体で最大の内分泌器官。

脂肪細胞から分泌されるホルモン
  レプチン 食欲を抑制する
  PAI-1  血液を凝固させ、血管を詰まりやすくする。
  男性ホルモンや女性ホルモン 過剰に分泌するとがん細胞の分裂が進む。
  TNF-α インシュリン受容体から「糖輸送担体W」にシグナルが伝達されるのを邪魔する。いくら膵臓がインシュリンを分泌しても血糖値が下がらないので、膵臓はインシュリンを分泌し続け、こうして膵臓がフル稼動する状態が10年以上続くと、膵臓が疲弊しインシュリンを出せなくなり、糖尿病になる。完全に糖尿病になった後にやせても、膵臓の機能は回復しない。
  肥満の治療法は? 食事療法 運動療法 行動療法 薬物療法 外科療法

食事療法だけでは、3kgくらいの減量で壁にぶつかりやすい。運動療法を組み合わせ、筋肉をつけ基礎代謝力を上げる必要がある。