歯が痛い!歯痛のメカニズム  現在工事中!神経系の概要
本文へジャンプ 2006年7月12日更新 
  知覚過敏になると冷たい水がツーンとしみますが、実際に冷水で冷やした綿球を押し当ててみれば、比較的原因となる歯を特定しやすいのに比べ、歯髄炎のときは上下どちらが痛いのか判別がむつかしい場合があるのはなぜでしょうか?また原因と思われる罹患歯を治療してもなかなか強い痛みがとれず、果ては原因と思われる歯を片端から抜歯されても強い痛みが良くならず、いくつかの医療機関をさまよい歩く患者さんが絶えないのはなぜでしょうか?

 これらは歯の痛みを脳で認識するシステムから説明することができます。


参照文献:A: 歯痛のメカニズム“なぜ歯は痛む?”大阪大学大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座 岩田幸一 教授
       B: medicine net.com "toothache" http://www.medicinenet.com/toothache/article.htm
       C: 口腔解剖学 4 神経学 上條雍彦 東京アナトーム社
       D: 臨床医のための痛みのメカニズム 改定第2版 横田敏勝 滋賀医科大学名誉教授
       E: トートラ 人体解剖生理学 原書6版 丸善株式会社
       F: カーペンター CORE TEXT 神経解剖学 第4版 監訳:嶋井和世・出浦滋之 /廣川書店
       G: 神経解剖学 岡山大学名誉教授 新見嘉兵衛著 朝倉書店
       H: リープマン神経解剖学第2版 訳:山内 昭雄 メディカル・サイエンス・インターナショナル 


コラム

ベル・マジャンディの法則(Bell-Magendie's law)

主に脊髄灰白質前角(腹側)から前根を経由して遠心性運動性神経線維が出るのに対し、末梢からの感覚情報は求心性感覚性神経線維を経由して脊髄神経節及び後根を通り後角(背中側)に入ります。

偽単極細胞

発生初期には2本の軸策突起を持っていた知覚神経細胞で、次第に2本の突起の根元が接近し、1本の突起を持つようになった細胞のこと。本来の突起が1本の単極細胞でないという意味で偽単極細胞と呼ばれます。

脊髄神経節 DRG

脊髄神経は前根と後根からなります。後根は椎間孔を経由して脊柱管に入ったところに膨らみをつくり、これを脊髄神経節と呼び、知覚性の第一次感覚ニューロンの集まりです。

脊髄神経Spinal nerves

@ 頚神経(Cervical nerves)
    8対 C1〜C8

A 胸神経(Thoracic nerves)
   12対 T1〜T12

B 腰神経(Lumber nerves)
   5対 L1〜L5

C 仙骨神経(Sacral nerves)
   5対 S1〜S5
D 尾骨神経(Coccygeal nerve)
   1対 Co


カラム構造 columnar structure
 同じ機能を持つ神経細胞の集まりが円柱状または直方体を為している集団。出力ニューロン、内在ニューロン、求心線維が一定のパターンで構造化され、中枢神経機能の単位を作っています。

脊髄神経前根から出る遠心性繊維:

 @体性遠心性線維(somatic efferent fiver):前角の運動ニューロンより起こる。体節に由来する骨格筋を支配する。

 A内臓性遠心性線維(visceral efferent fiver):体節を除いた中胚葉、内胚葉に由来する平滑筋、心筋、腺に分布し、自律神経の節前線維として脊髄を出て、途中にある自律神経節(幹神経節)で中継されて節後線維となってから末梢に分布する。

  Aa 胸髄(T1〜T12)と腰髄(L1、L2)から出る交感神経 T1〜T12、L1、L2の側角の交感性節前ニューロンから出る。
  Ab 仙髄(S2、S3、S4)から出る副交感神経 S2、S3、S4の副交感性節前ニューロンから出る。

 痛みの定義:

痛みは感覚と情動があいまって構成されている感覚情動体験です。国際疼痛委員会の用語委員会は痛みを“組織の実質的あるいは潜在的な障害に結びつくか、このような障害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚、情動体験”と定義しています。侵害刺激により痛覚受容器が刺激されて起きる感覚とそれに伴う不快感、恐怖、怒り、不安などの情動はまぎれもない痛みでありますが、身体のどこにも原因となる病変が認められない感覚・情動体験であっても痛みとして認められます。 ←D: P1

また痛みは次のような性質を有する感覚であると定義されています。

@ sensory discriminative aspect(痛みの弁別的様相):どこが痛むのかどのような痛みなのか識別する体性感覚の性質

A motivational and emotional aspects(痛みの情動的様相):非常に強い痛みのためにどこが痛いのか判らない状態で、心臓機能の亢進や発汗を伴う自律神経系反応を伴う性質

B cognitive evaluative aspect(痛みの認知的様相):過去の経験から与えられた刺激がどのような痛みかを認識したり、他に気をとられるあまり、痛みを忘れるような性質
←A:P12を参照

体性痛と内臓痛:D: P3を参照。脊髄神経後根が痛みの経路

感覚は感覚器から視床を経て大脳新皮質頭頂葉へと伝えられます。体性知覚の伝導路は頭部と頭部以外の領域において異なる神経路をたどります。頭部以外の体性感覚の場合、脊髄神経後根⇒視床⇒大脳皮質の経路をたどります。



○脊髄神経後根:

脊髄神経節(DRG)の第一次感覚ニューロンは偽単極細胞で、細胞体から出た短い1本の軸策突起が2方向に分れ、一方は末梢枝として末梢に分布して、直接あるいは受容器細胞を介して間接的に刺激を受容する。他方の枝は中枢への枝として脊髄後根となって、受容器からのインパルスを脊髄に伝える。この軸索突起が感覚線維(sensory fiver)である。

感覚線維には、体節から発生した器官に分布する体性感覚線維(somatic sensory fiver)と体節以外の中胚葉と内胚葉から発生した器官に分布する内臓性感覚線維(visceral sensory fiver)とがある。

○痛覚線維も体性感覚線維に属する体性痛覚線維と内臓性感覚線維に属する内蔵痛覚線維に分類されます。

@体性痛(somatic pain):体性痛覚線維(somatic painfiver)が興奮したときに生じる痛み
 
 @表面痛(superficial pain):皮膚や体表の粘膜の痛覚線維が関与する痛み

 A深部痛(deep pain):骨格筋、関節、靭帯、骨膜などに分布する痛覚線維が関与する痛み

A内臓痛(viseral pain):内臓痛覚線維(viseral pain fiver)が興奮したときに生じる痛み

歯根膜の深部知覚は咀嚼筋、外眼筋と同様に一般体性求心性ニューロンカラムcolumnである三叉神経中脳路核が司る。




椎間孔

脊柱は32〜34個の椎骨vertebraが上下に連なって構成されていますが、各椎骨はそら豆状(腎臓形)の椎体とそら豆のくぼみ側に形成されているU字上の椎弓からつくられています。
椎体は腹側、椎弓は背中側に位置し、椎体と椎弓のつくるスペースが椎孔と呼ばれる脊柱管で、脊柱管の内部脊髄が通ります。
各椎弓は背中側に棘突起、外側方向に横突起を出し、上下方向には左右二対の上関節突起と下関節突起を出しています。上下関節突起は建物の縦柱の役目を果たし、椎体(+椎間円板)とともに脊柱を支えています。
上下椎体それぞれの相対する切痕がつくる左右外側の隙間を椎間孔といい、脊柱管からの脊髄神経の出入り口となります。椎間孔を通るものには脊髄神経の他に、椎骨動脈、肋間動脈、腰動脈、腸腰動脈、外側仙骨動脈と各静脈があります。


一次痛(即時痛)と二次痛(遅延痛)

一次痛 二次痛
即時痛 遅延痛
Aδ線維
脊髄小径線維
C線維
無髄線維
高閾値侵害受容器 ポリモーダル侵害受容器
鋭い痛み 鈍い痛み
局在性明瞭 局在性不明瞭
感覚野、連合野に伝わる感覚としての痛み 大脳辺縁系に伝わる情動的な痛み

二次痛を放置すると痛覚過敏状態が引き起こされる。

軸索反射

機械的刺激、化学的刺激、温熱刺激などの侵害刺激がポリモーダル受容器に感知されると、そのインパルスは軸索を通って脊髄後角の第二層に伝わり、後角内で他のC線維の分枝に伝導する。このC線維から逆に侵害局所の末梢にインパルスは伝わり(軸索反射)、C線維末端であるポリモーダル受容器からサブスタンスP、CGRPなどの神経ペプチドが分泌される。これら神経ペプチドは侵害局所の血管の透過性を亢進し神経原性炎症を起こし、その炎症がさらにポリモーダル受容器を刺激するという悪循環が起こります。

化学受容器:O2、CO2、H+の血液中のレベル変化をモニターする。頚動脈小体、大動脈小体、延髄内にある中枢化学受容器が知られています。化学受容器は血液中のO2、CO2、H+濃度を調節するネガティブフィードバックに関与しています。

高閾値侵害受容器 

侵害刺激があったとき最初に感じるチクッとした鋭い痛みを感じる受容器。痛みの部位や時間の識別に優れ、大脳皮質へ情報を伝達します。

ポリモーダル受容器(polymodal receptor)
神経ペプチドpituitary adenylate cyclase activating polypeptide (PACAP)

感覚路sensory pathway

T感覚路を構成するもの
 1.受容器receptors
  @一次受容器細胞primary receptors cells
 一次ニューロン自体の末梢が感覚受容器を兼ねています。
 痛覚、温覚、粗大な触覚・圧覚、振動覚など

  A二次受容器細胞secondary receptors cells
 一次ニューロンは末梢で、受容器細胞とシナプス結合している。
 味覚、聴覚、前庭感覚、視覚など

 2.一次ニューロン
  細胞体somaは脳・脊髄神経節に局在します。通常の脳・脊髄神経節の場合、ニューロンの形は偽単極細胞ですが、ラセン神経節や前庭神経節では双極細胞になっています。

 3.二次ニューロン
 細胞体は脊髄後角や脳幹の知覚性神経核にあります。
知覚性神経核(延髄後索核、三叉神経主知覚核、三叉神経脊髄路核など)

 4.三次ニューロン
 細胞体は視床中継核にあり、その軸索は大脳皮質の感覚野に投射しています。
体性感覚野、視覚野など。

U体性感覚の神経回路

 1.頭部以外の体性感覚路(上行性伝導路(Ascending Tracts))

  @後索(Dorsal column)・内側毛帯系
 
  A脊髄視床路系

  B深部感覚を伝える神経回路

 2.頭部の体性感覚路(三叉神経毛帯系、三叉神経核視床路

三叉神経感覚核

中脳から頚髄を通り、脊髄後柱に移行するカラム(column=細胞柱)を為し、吻側から尾側に向かって@三叉神経中脳路核 A三叉神経主感覚核 B三叉神経脊髄路核 の3部から成り立っています。

片側性の大脳皮質知覚領の損傷

⇒痛覚と温度感覚は反対側に交叉し、触覚・圧覚は両側の上行路を辿るために、患者は顔面の触圧覚は失わず、損傷部位と反対側の顔面皮膚からの温痛覚を失います。
歯髄に含まれる神経は大半がC線維

 神経組織はニューロンとグリア細胞から構成されています。ニューロンは神経インパルスの伝導のために特化した細胞で、グリア細胞はニューロンを支え、栄養を補給し、保護している細胞です。

ニューロンは @細胞体 A樹状突起 B軸索から成り立っています。このうち細胞体と樹状突起dendritesは神経インパルスの入力部位であり、軸索axonは神経インパルスの出力を他のニューロンや筋線維、腺細胞に伝える部分です。軸索のほとんどは脂質と蛋白質からなる髄鞘myelin sheathにより取り囲まれています。髄鞘は絶縁機能があり、被覆されていない部分、ランビエの絞輪で跳躍伝導するために神経インパルスの伝導速度を高める役割を果たしています。

 
軸索 太さによる分類 太さ 神経伝達速度 遠心性支配 求心性支配
有髄 myelinated A線維 Aα線維 運動神経 12〜20μm 毎秒100〜150m 横紋筋 筋紡錘、腱紡錘の螺旋受容器
Aβ線維
知覚線維
5〜12μm 筋紡錘、腱紡錘の散形受容器
Aγ線維
痛み一次痛
3〜6μm 筋紡錘 圧受容器、肺動脈の機械的受容器
Aδ線維
痛み一次痛
2〜5μm 体表の機械的侵害受容器
体表の温度侵害受容器
関節・筋膜の機械的侵害受容器
内臓受容器、化学受容器
B線維 自律神経 3μm以下 内臓受容器、化学受容器
無髄 unhmyelinated C線維 体性線維 0.4〜1.2μm 毎秒1〜10m C機械的受容器、温度受容器、機械的・冷的受容器、ポリモーダル侵害受容器 二次痛
交感神経 0.3〜1.3μm 内臓・血管の運動 C機械的受容器、温度受容器、機械的・冷的受容器、ポリモーダル侵害受容器 

痛みはAδ線維とC線維が伝える。

太い有髄神経であるβ線維は触覚を伝え、痛みを伝えません。細い有髄線維であるAδ線維は侵害刺激により一次痛を伝えます。
無髄線維であるC線維は亜急性の痛みである二次痛を伝えます。

歯髄根尖部の神経分布の大半は無髄神経であるC線維であるので、歯髄に加わる大半の刺激はじわっとくるズキズキした痛みとして伝えられます。しかし1/5〜8は有髄神経ですので、歯髄に加わる刺激の種類によってはprepainとも呼ぶべき感覚情報が伝えられている可能性があります。


動水力学説に基づく“しみる”痛み

象牙細管は組織液で満たされておますが、エナメル質や象牙質に刺激が加わると、この組織液が細管内を移動します。この組織液の移動により、象牙細管内に分布する自由神経終末や象牙芽細胞周囲や象牙前質内に分布する神経終末が刺激を受け、そのインパルスは歯髄内のC線維(軸索)を経由して中枢へ伝えられます。この痛みは“しみる”痛みとして表現されます。このように“しみる”痛みは歯髄神経の機械的刺激により由来します。

ズキズキする歯髄炎の痛み

むし歯菌の菌体外毒素や様々の機械的・化学的刺激が歯髄に伝わると、軸索反射により別の知覚神経C線維末端から神経ペプチド(neuropeptide)と呼ばれるサブスタンスP(SP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)などの神経ペプチドが遊離します。これらの神経ペプチドは一般に血管の透過性を亢進させ、神経原性炎症を引き起こします。その結果、血管外へ血液成分が漏出するために、間質圧が高まり、局所の循環不全を起こし、歯髄組織は急速に破壊されていきます。根管内の圧力上昇はさらに歯髄内の神経終末を刺激し、C線維が中枢へズキズキする痛みを伝えます。

三叉神経系での痛みの伝達 痛覚は視床で中継されて大脳に伝わります。

歯髄の軸索のインパルスは三叉神経の末梢枝として三叉神経節(Ganglion trigeminale=半月神経節Ganglionsemilunare=ガッセル神経節gasserian ganglion,Gasser's ganglion)を経由して橋の高さで脳幹へ入ります。脳幹に入った三叉神経求心性線維は上行枝と下行枝に分れ、上行枝は三叉神経主知覚核へ向かい、下行枝は三叉神経脊髄路となって脊髄レベルまで下降します。

三叉神経は橋と中小脳脚の間の上縁付近で、大、小2根にて起こります。

  @大部(Portio major)  知覚根Radix sensoria,sensory root

  A小部(Portio minor) 運動根Radix motoria,motor root

また三叉神経節は脊髄神経節と同様の偽単極細胞からなり、大部分が知覚ニューロンで末梢枝(眼神経・上顎神経・下顎神経)と中枢枝(大部、知覚根)を出します。中枢での三叉神経の知覚性線維の停止核(終止核)は以下の3つの核からなります。

@三叉神経主知覚核principal sensory nucleus of trigeminal nerve 触覚を伝える線維の終止核。

A三叉神経脊髄路核Nucleus (terminalis) tractus spinalis 痛覚・温度感覚を伝える線維の終止核。

B三叉神経中脳路核Nucleus (terminalis) tractus mesencephalici 咀嚼筋に分布する知覚線維の終止核。

このように歯髄からの痛覚は三叉神経脊髄路核(X:第X脳神経)に投射しています。
三叉神経脊髄路核は三叉神経主感覚核と脊髄後角の間に挟まれています。機能的に3つに分けることができ、

 @吻側亜核 subnucleus oralis:Vo、大半が触覚ニューロン。
 A中間亜核 subnucleus interpolalis:Vi 触覚ニューロン。
 ○閂
 B尾側亜核 subnucleus caudalis:Vc 三叉神経系の痛覚と温冷覚を視床後内側腹側核へ中継しています。

で構成されています。

脊髄神経系では侵害受容性一次ニューロンは脊髄後角の第2層に投射し、ここで二次侵害受容ニューロンとシナプスをつくりますが、三叉神経系で侵害受容経路の中継核として機能する脊髄後角に相当するのは、三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)になります。歯髄の痛みや顔面皮膚や顎関節の痛みは尾側亜核(Vc)で中継されて、視床を始めとする上位中枢へ送られます。
三叉神経脊髄路核尾側亜核は頚髄後角が延髄に伸びたもので、両者は明確な境界がなく移行しています。尾側亜核も脊髄後角と同じような層状構造になっています。(表層から辺縁層、膠様層、大細胞層)
侵害刺激を伝える三叉神経系の侵害受容ニューロンは尾側亜核の辺縁層と膠様層の外側に散在します。

末梢神経からの情報を中継する尾側亜核(Vc)内の神経細胞を二次ニューロンと呼びますが、二次ニューロンは上位中枢へ情報を送る投射ニューロンと尾側亜核(Vc)内に情報を送る介在ニューロンに分けることができます。

歯髄の痛覚はいくつかの投射神経により上位中枢へ伝播しますが、その代表的な投射経路として三叉神毛帯系があります。


 三叉神経毛帯系trigeminal lemniscal system:特殊感覚の伝達に関与し、視床の特殊核に終わる。内側毛帯、外側毛帯、脊髄視床路、二次三叉神経視床路。

参照G:三叉神経主知覚核及び脊髄路核からの二次経路(上行路)を三叉神経毛帯または三叉神経核視床路と呼びます。外側路、背側路(内側系)、腹側路からなる。


 @ 識別できる触覚・圧覚 腹側路 内側毛帯に相当する。

三叉神経知覚線維からの入力⇒三叉神経節(一次ニューロン)⇒橋(上行路)⇒三叉神経主知覚核(二次ニューロン)⇒毛帯交叉⇒反対側の内側毛帯⇒視床VPM核(ventral posteromedial thalamic nucleus視床後内側腹側核:3次ニューロン)⇒ 中心後回(post central gyrus)の第一次体性感覚野

 A温度覚・痛覚・粗大な触覚・圧覚 頭部の痛みの伝導路には内側系と外側系があります。
 
  @.内側系:情動的・認知的 motivational and emotional aspects 内側毛帯の背外側を上行する。
    前脊髄視床路: ASTT anterior spinothalamic tract=旧脊髄視床路paleospinothalamic tract

三叉神経知覚線維からの入力⇒三叉神経節(一次ニューロン)⇒橋(下行路)⇒三叉神経脊髄路核spinal trigeminal tract nucleus(GSA)尾側亜核(Vc)(二次ニューロン)⇒毛帯交叉⇒反対側の前索 anterior funiculus⇒延髄と橋の内側網様体⇒視床髄板内核群や視床下部⇒大脳辺縁系

  A.外側系:感覚的・識別的sensory discriminative aspect オリ−ブ核と錐体の間を上行する。
    脊髄結合腕傍核路spinoreticular tract

三叉神経知覚線維からの入力⇒三叉神経節(一次ニューロン)⇒橋(下行路)⇒三叉神経脊髄路核spinal trigeminal tract nucleus(GSA)尾側亜核(Vc)(二次ニューロン)⇒毛帯交叉⇒反対側の内側毛帯medial lemniscusの外側端部⇒視床VPM核(視床後内側腹側核、3次ニューロン)⇒ 中心後回(post central gyrus)の第一次体性感覚野

 頭部と顔の感覚を伝える神経路:まとめ (参照F,G,H)

◎三叉神経(一部迷走神経などがある):三叉神経節に一次ニュ−ロンがある。三叉神経節細胞の中枢枝は、三叉神経知覚根を生成し、橋外側を通って橋被蓋から脳幹に入り、橋及び延髄に広く分布している知覚核に連絡する。知覚の種類によって、中継核が異なる。三叉神経知覚根繊維の多くは短い上行枝と長い下行枝に分岐するが、一部の線維は分岐せずに上行または下行する。上行枝は三叉神経主知覚核に中継し、下行枝は三叉神経脊髄路Spinal Trigeminal Tract を形成する。

(1)痛覚と温度覚の伝導路

眼神経・上顎神経・下顎神経⇒半月神経節(三叉神経節)⇒橋(pons)⇒三叉神経脊髄路(三叉神経下行路)⇒三叉神経脊髄路核⇒交叉⇒腹側三叉神経視床路⇒三叉神経毛帯系⇒視床VPM核(視床後内側腹側核)⇒内包⇒反対側の大脳皮質の中心後回


(2)圧覚と触覚の伝導路

眼神経・上顎神経・下顎神経⇒半月神経節(三叉神経節)⇒橋(pons)⇒三叉神経主知覚核⇒背側三叉神経視床路⇒(上行路は交叉する経路と交叉しない経路の2経路が混在)⇒視床VPM核(視床後内側腹側核)⇒内包⇒両側の大脳皮質の中心後回

(3)固有覚の伝導路 咀嚼筋、顎関節、歯周靭帯の固有感覚を伝える。一次ニューロンは三叉神経中脳路核⇒大脳皮質の中心後回