タイトルイメージ 63 「メタボリック健診」発動する!
本文へジャンプ 4月29日 
  
 

 後漢末期の将軍、董卓はライバルである丁原の片腕である呂布に名馬「赤兎馬」を贈り丁原を裏切らせます。

位人臣を極めた董卓は暴虐の限りを尽くし、人民の恨みを買いますが、初平3年4月(192年)、最後は養子にした呂布に殺されます。

呂布は董卓一族を処刑し、その遺骸を城外で燃やします。

極度に肥満していた董卓の臍に野営の兵士が悪戯で灯心を差し込んだところ、その遺骸は三日三晩燃え続けたそうです。

心の状態は、身体の状態により簡単に変容し、董卓も最初は親分肌で部下の面倒見のよいパソナリティーでしたが、権力を握るにつれて肥満するとともに、耐糖能障害が進み、低血糖状態が続くようになったため、苛々しやすく凶暴で酷薄な陰の性格が表に表れてきたものと考えられます。

 愛想の良かったはずのあの人が、急に機嫌が悪くなり、怒りの衝動を抑えられなくなっていませんか?

 もしかすると董卓のように運動不足と過食・ストレスから「悲劇の人間蝋燭化」が進行しているのかもしれません。

健康保険法が改正され、本年の4月1日から後期高齢者保険制度が発足すると共に、厚生労働省は、2008年度からメタボリック・シンドロームの予防・改善を目的とする『特定健診・特定保健指導』をスタートさせ、健康保険組合にいわゆり「メタボリック健診」の実施を義務付けました。

40歳から74歳の家族を含む医療保険加入者を対象に、メタボリック・シンドローム(内蔵脂肪症候群)の予防対策として、各医療保険者の責任で特定健診を行い、さらにメタボリック・シンドロームの疑いがある者またはその予備軍を選定・階層化して、実効性のある保険指導を行なうことになっています。

対象者の基準として以下の要件が挙げられています。

@ 腹囲が男性で85cm以上または女性で90cm以上。
A 腹囲が男性で85cm以下または女性で90cm以下であるが、BMIが25以上。
これに
脂質異常、高血圧、高血糖が一つでも加われば、メタボリック・シンドローム予備軍と判定され、二つ以上合併すれば、メタボリック・シンドロームそのものと判定されます。

@ メタボリック・シンドローム予備軍に対する指導は、

@ 動機づけ支援として「初回面接」一人20分以上の個別指導か1グループ80分以上の集団指導が行なわれます。
A 「6ヵ月後」に電話かメールで健康状態や生活習慣を確認する。

A メタボリック・シンドローム該当者に対しては、積極的支援として、
 @ 「初回面接」:内臓脂肪減量のための行動目標を立てる。一人20分以上の個別指導か1グループ80分以上の集団指導
 
 A 「3ヶ月以上、継続的な支援」:行動計画の実施状況の確認を行い、目標設定の見直しを行なう。

 B 「6ヵ月後」に電話かメールで健康状態や生活習慣を確認する。

特定健診と特定保健指導は、特定健診・特定保健指導実施機関リストに掲載された医療機関や健診機関を受診することで行い、平成20年度に限り、自己負担額0で実施されます。

特定健診・特定保健指導により、一定の成果が上がらない保険者に対しては、補助金の減額などによる罰則が用意されていると言われています。

すでに大企業の健保組合を中心に、4月から特定健診事業がスタートしていますが、歯科医師会会員とその家族の場合は例年行なわれている簡易健康診断を利用して、8月からノルマを達成することを予定しています。

いよいよ国も成人病を予防することにより、少子高齢化に伴う医療費の自然増に正攻法で立ち向かう決意を決めたと言えるでしょう。

日本の医療費負担を増やしているのは、メタボリックばかりでなく、喫煙が年間3兆2000億円以上も医療費増加の原因になっていると言われています。

1.たばこ産業経済メリット:2兆8000億円
 ・たばこ税……1兆9000億円
 ・たばこ産業内の賃金……1900億円
 ・たばこ産業内部留保……1600億円
 ・関連産業賃金……1700億円
・ 関連産業利益など……3300億円

2.たばこ産業社会コスト:5兆6000億円
 ・医療費……3兆2000億円
 ・国民所得の損失……2兆円
 ・休業損失……2000億円
・ 消防、清掃費用……2000億円

つまり喫煙習慣は差し引き2兆8千億円の負担を社会に加えています。
(参照:http://www.gamenews.ne.jp/archives/2007/05/post_2331.htmlより引用。)

この際、厚労省はタバコの主管を財務省から奪い取って、本気で禁煙率削減目標を策定し個別の禁煙対策を実施すべきだと思います。

メタボリック・シンドロームとタバコの両者に対する対策を実行してこそ、社会的予防医学の両輪が揃ったと言えるわけで、国民の生命を本当に守る気があるのなら、財務省に対する下手な遠慮はなくしていただきたいと考えます。

喫煙者が社会的に表舞台から駆逐されつつある今、次に標的にされるのは肥満です。これからは太っているというだけで、街を歩いていれば石で追われるような時代になるかもしれません。

言い訳になりますが、肥満の原因の70%は確かに過食・偏食、運動不足など生活習慣にありますが、残りの30%は生まれつきの代謝速度など、遺伝的要因にあります。

「メタボリック健診」という名の現代の魔女狩りに怯えつつも、スリムになった自分が元気に生きる姿を目標に、痩せるという国民の義務を何とか果したいと考えております。

最後に、歯周病と高血圧、高脂血症、糖尿病は深い関係があります。
歯周病を治し、健康な歯槽骨と歯肉を保つためにも、メタボリック・シンドロームの克服は重要な課題になっています。

里の桜はもうそろそろ葉桜になりつつありますが、お花見で浮かれて暴食・痛飲しすぎ、腹囲が危険水準に突入してしまった方はいらっしゃらないでしょうか?

これからでも悔い改めるに遅すぎることはありません。

親鸞上人だって「悪人なおもて往生を遂ぐ。いわんや善人をや。」と諭されたじゃありませんか?

参考文献:「全国歯科医師健康保険組合からのお知らせ」