bT5 習慣の自殺 (糖尿病と歯周病 その1)
本文へジャンプ 4月22日 
 
 bT5 習慣の自殺 (糖尿病と歯周病 その1)

 長い間にしみついた認知や行動のパターンから抜け出すことは、大いなる苦痛を伴うために、よほど強い動機と克己心がなければ困難を極めます。

 またふつう人間は自分に対しての評価は甘いために、自分以外の世間はすべて分っている欠点なのに、本人だけがそれに気がついていないことも往々にして見受けられます。

 診療室で禁煙を勧めても、すべての人が成功するわけでなく、そういう自分自身でさえ、かかりつけの医師からメタボリック症候群と告げられても、なかなか生活のパターンを変えることができません。

 糖尿病による細血管障害や高血圧に伴う動脈硬化の進行が、歯周病の進行を促し、病態を複雑化し、治癒を障害することは、昔から指摘され続けてきたことです。

 平成20年4月から医療保険者(国保・被用者保険)において、40歳以上の被保険者・被扶養者を対象とする、内臓脂肪型肥満に着目した健診及び保健指導の事業実施が義務づけられました。

 厚労省が発表した指針によりますと、その概要は以下のようになっています。(厚生労働層ホームページhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu/index.htmlより転載)

1 運動施策の推進 健康づくりのための運動指針2006 (エクササイズガイド2006)⇒http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/undou01/pdf/data.pdf

@ 身体活動:安静にしている状態より多くのエネルギーを消費するすべての動き
A 運動:身体活動のうち、体力の維持・向上を目的として計画的に実施するもの
B 生活活動:身体活動のうち運動以外のもの
・ メッツ(強さの単位):身体活動の強さを安静時の何倍に相当するかで表わす単位で、座って安静にしている状態が1メッツ、普通歩行が3メッツに相当します。
・ エクササイズ(EX):身体活動の量を表わす単位で、身体活動の強度(メッツ)に時間をかけたもの。より強い身体活動ほど短い時間で1エクササイズ(EX)になります。
(例)3メッツの身体活動を一時間行なった場合:3メッツ×1時間=3エクササイズ(EX)


健康のためには、週23エクササイズ以上の活発な身体活動(運動・生活活動)を行い、そのうち4エクササイズ以上の活発な運動を行なうことを推奨しています。



活発な身体活動を行なうと、消費エネルギーが増えて身体活動が活性化することにより、糖や脂質の代謝が活発となり、内臓脂肪の減少が期待できます。その結果、血糖値や脂質異状、血圧が改善され生活習慣病の予防につながります。
内臓脂肪を確実に減らすためには、週に10エクササイズ以上の運動量を保つ必要がありますが、30分の速歩を週5日行なうと10エクササイズに該当するそうです。
食事摂取量を変えなくても、一週間に10エクササイズ程度の運動を1ヶ月続けることにより、1〜2%体重を減らせるそうです。





さっそく公園にでも歩いてでかけましょうか?
ただし、2007年8月16日に三重県伊勢市で、市長発案による「メタボ侍 内臓脂肪を斬る」と題して行っていたダイエット作戦において、午前7時頃トレーニングを行なっていた47歳の課長さんが、心筋梗塞でお亡くなりになられている事例もありますので、無理は禁物です。特に高血圧症の方は、「モーニングサージ」と呼ばれる早朝高血圧現象が起こることが知られていますので、起き抜けの運動時には注意が必要になります。

2 栄養・食育対策の推進 食事バランスガイド⇒http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-syokuji.html
食事の望ましい組み合わせやおおよその量を示した図が食事バランスガイドです。













このバランスガイドはなかなかの優れもので、患者さんの食事指導を科学的に行なうガイドになるだけでなく、院長先生や歯科衛生士さんなど、診療スタッフの健康管理にも使えると思います。

3 たばこ対策 禁煙支援マニュアル⇒http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kin-en-sien/manual/index.html
これも禁煙を試みる方は参考にしてください。

肥満や高血圧は生活習慣だけでなく、もちろん両親から受け継いだ遺伝体質による要素も大きいものです。

先日も日経に「メタボ患者は自己管理能力が弱く、将来を予測して危険回避をするよりも、現状の状態に満足して大局を分析する気持ちに欠ける。これは放漫財政の結果、累積債務超過に陥った我国の財政政策と同じである。」といった趣旨の記事が掲載されていました。

メタボであるというだけで、世間から石を投げられる日も近いかと思いますが、とりあえず目の前の杯などに手が伸びてしまいますのが、悲しい人間の性でございます。

次回からしばらくの間、糖尿病と歯周病の関係について徹底的にリサーチしていきたいと考えています。