bT4 がんばる人は報われる社会
本文へジャンプ 4月21日 
 
 焼岳

 報道によれば、2008年4月7日、経済協力開発機構(OECD)は2008年の「対日経済審査報告書」で、日本の労働市場で格差が広がっていることに対し警告を発しました。

審査報告書は、日本では雇用全体に占める非正規社員の比率が三分の一を超えていることを指摘し、低賃金で働き、短期間で転々と職を変える人が増えていることを強調、日本の労働市場は「公平と効率の面で深刻な懸念を引き起こしている」と分析しています。

OECDの「対日経済審査報告書」は日本経済に対する国際社会の見方を反映しているとされますが、財界主導の「骨太の改革」を推し進めた結果、今や日本は世界が認める「生活者に冷たい国」になってしまいました。

OECDはさらに、非正規労働者への職業訓練制度の拡充、働く女性を増やすために@保育施設の増加 A長時間労働で家庭生活に支障が出ないような労働基準法の運用改善 B共働き家庭の優遇税制、消費税率の引き上げと地方税の簡素化、小売業・運輸業・エネルギー分野の規制見直しなどを掲げています。(信濃毎日新聞夕刊より引用)

当事者でなく、日本の事情よく理解していない外部の国際機関に、日本の行く末を心配していただくことには、本当に情けない思いがします。

OECDの見方が正鵠を射るものであるかは、別にして、末期的な様相を示しています日本の公的累積債務の原因のひとつに、過去に行われた企業に有利な税制改革があるのではないかという見方があります。

1988年の所得税率は、年収150万円以下が10.5%、年収200万円以下が12%、300万円以下が16%、500万円以下が20%、600万円以下が25%、800万円以下が30%、1000万円以下が35%、1200万円以下が40%、1500万円以下が45%、3000万円以下が50%、5000万円以下が55%、5000万円超が60%で12段階に区分されていました。

一方、1989年(平成元年)4月1日に消費税が導入されてからは、330万円以下が10%、900万円以下が20%、1800万円以下が30%、1800万円超が37%の4区分になり、従来5000万円以上の階層にかかった所得税率は60%から37%へと大幅に減少しています。

企業にかかる法人税も1988年の42%から30%に切り下げられたわけで、資本金一億円以上の黒字法人で、年間、合計2兆8千億円が減税となり、2002年の国家予算の国債を除いた赤字分13兆3千億円のうち、減税による赤字が7兆6千億円にのぼり、減税額の70%が資本金1億円を越える黒字法人の減税額だそうです。(「格差社会をこえて」暉峻淑子(てるおか・いつこ)岩波ブックレット650参照)

財界と政府は「直間比率」を変えることを主張し続けていますが、結果を見れば、企業減税をした分を国民が消費税で支払っているだけのことになっています。

少子高齢化社会への対応のために、消費税逓増がやむをえない選択であると説明されていますが、実際高齢化対策として打ち出されたゴールドプランに使われた金額は、消費税収入全体の7〜8%に過ぎないと言われています。

今後も12%超への引き上げが計画されている消費税ですが、100%福祉目的税化しないかぎり、日本の社会保障が好転する機会は永久に訪れないものと思われます。

これらの庶民に過酷な「改革」は財界首脳を各種審議委員会、諮問会議の役員に迎えることにより推し進められてきました。

本来国家の行き方を決めるのは国民が選んだ選良が行なうのが間接民主主義の譲ることのできない原則です。

現実の日本では、首相と官僚が恣意的に選んだ「各界の有識者」が政策に決定的で重大な影響を与え続けています。諮問会議の民間議員に、明日の雇用継続に怯えながら働かなくてはならない非正規労働者や、少ない年金で限界的な生活を営む高齢者や、両親のリストラのために高等教育をあきらめた若者や、過酷な勤務に過労死寸前で勤務している小児科や産科の勤務医などが選ばれることは決してありません。

そこでは健全な間接民主主義は形骸化し、立法府の誰も、足もとにある日本の危機に気がついていません。ある意味で限られた階層による「Despotic state」の変形形態ではないかと思われる節があります。

医師会も歯科医師会も、ただ医療費の増大を叫ぶばかりではなく、現実の日本を動かしている構造に切り込まない限り、国民と共闘することはかないません。

  過日、衆院内閣委員会で、元社会保険庁長官の正木馨氏が退官後、複数の法人、全国社会保険協会連合会副理事長(在職1年1か月)、社会保険診療報酬支払基金理事長(同6年1か月)、旧医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構理事長(同3年11か月)、社会保険健康事業財団理事長(同6年2か月)を渡り歩き、数年間で2億9000万円以上の報酬と退職金を得ていたとの指摘がありました。

小泉元首相や竹中平蔵氏、奥田碩氏やキャノンの御手洗冨士夫氏、オリックスの宮内義彦氏、ザ・アールの奥谷禮子氏等の「財界有識者」が主張する「がんばる人は報われる社会」というのはこういうことを指すのかと納得した次第です。