№133「Over brushingは歯を弱くする」

本文へジャンプ 3月29日 
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 №133「Over brushingは歯を弱くする」



 口臭に悩む人や歯周病の予防のために、一日に4回から5回以上、歯磨剤をたっぷりつけてゴシゴシ歯を磨いていませんか?

何事もやりすぎは禁物で、有限の資源であるエナメル質が間違った方法の過剰な歯磨きで磨り減り、また歯肉も退縮してしまう患者さんが後を絶ちません。




通常、子供達は食事の後に必ず歯を磨くように指導されていますが、歯磨剤をたっぷりつけてゴシゴシとストロークの大きな歯磨きを一日に何回も繰り返す習慣は、酸蝕症を進めると同時に歯肉を退縮させてしまうことがあります。

通常、歯科医は、炭酸飲料やスポーツドリンク、缶コーヒー、飴やチョコレートがむし歯を引き起こす危険性について警告しますが、果物や果物のジュースもまたクエン酸をたくさん含んでいるために、食べ方を間違えるとエナメル質を脱灰する原因になります。

すなわちエナメル質はPH5.5以下、歯根表面はPH6.7以下で溶けるために、PH2.30~2.64のワインやPH2.94のコーラ、PH3.0~4.1のフルーツジュースなどを飲む回数が多いか、就寝前に飲む習慣があれば、簡単にエナメル質は脱灰してしまいます。

食事の後、すぐに歯を磨く習慣が従来推奨されてきましたが、この時、注意しなければならないことは、酸を多く含むオレンジなどを食べた後にすぐに歯を磨く場合、酸により柔らかくなった歯の表面を傷めてしまうことです。

特に硬い歯ブラシで、研磨剤の入った歯磨剤をたっぷりつけて磨く場合、歯質の表面を削り取ってしまうかもしれませんし、歯肉が下がりやすくもなります。

アメリカのある調査によれば5歳児の53%の歯質に間違った歯磨き習慣による損傷が認められ、10歳から12歳では数人の児童が歯の変形を伴う酸蝕症の状態になっていました。
⇒http://lifestyle.in.msn.com/health/article.aspx?cp-documentid=1511782


ニューキャッスル大学の歯学部教授であるジミー・スチール教授は、小児期からの対策が将来の酸蝕症から子供を守ると主張しています。

永久歯は、子供が6歳くらいで萌出してきますが、その後、一生涯機能することを求められています。

従って保護者は、子供の歯を守るために、酸性食品を摂る子供に対して酸蝕症を防ぐ具体的なアドバイスを与えるべきです。

例えば「ジュースを飲むときはストローを使って喉の奥に吸い込むようにする」とか「歯の表面が溶けているので、酸性食品を食べたり飲んだりした後、すぐに歯磨きをしない。」「就寝前一時間に酸性食品を摂らない」などです。

ふつう糖質を含む食品を食べるとわずか2分くらいで口の中のPHは急速に低くなり、エナメル質が溶け出す臨界PH5.5以下になってしまいます。

脱灰状態はおよそ20分続き、その後、20分から30分かけてお口の中は元のPHに回復しますが、唾液中に溶けだしたカルシウムイオンが再吸着するのにはもっと時間が必要です。したがって酸性食品を摂取した後の歯磨きは少なくとも40分から1時間以上過ぎてから行ったほうが安全だと考えられます。

晩酌を行った後にすぐに歯を磨いて寝る習慣を持っている人は、却ってむし歯を増やしている可能性があり、1時間くらいしてから丁寧に研磨剤の入っていないアパガード・リナメルなどの再石灰化機能の強い歯磨剤を用いて、歯磨きを行う方法が推奨されます。

歯肉退縮は強い歯ぎしりでも起りますが、乱暴な強い歯磨きによっても起ります。

歯垢は歯ブラシの毛先が直角に当たった部分しか落ちませんので、手鏡を見ながら歯ブラシの毛先がきちんと隣接面に接触しているかどうか確認しながら、サッサと箒で掃くような感覚で行うと安全で効果的に磨くことができます。(⇒毛先磨き)

また歯ブラシは手で握るハンドグリップで磨くのではなく、鉛筆を持つようなペングリップで磨くほうが、力が入りすぎずに精密に磨くことができます。
また一般にゴシゴシ磨きの習慣を持つ人は隣接面に歯垢が残る傾向が強いので、デンタルフロスをよく使うことも重要です。

一度酸蝕した歯の表面や退縮してしまった歯肉をリカバリーすることは不可能ではありませんが、大変な手間や時間、費用が必要になります。

正しい歯磨きやホームケアのちょっとした習慣を知ることにより、生涯、健康な歯や歯肉を守ることができるわけで、かかりつけの歯科医院で定期的なオーラルチェックとアドバイスを受けることをお勧めします。