歯科医院の上手なかかり方 

 知っているか知らないかで大きな差がつくのが世の中の常。最短最良の航路を求めて、いつも神経を張り詰めているのも大変ですが、ちょっとしたノウハウで大きなお得があるならば、知っておいて損はないでしょう。


 こんな患者さんが得をする!  予約を守る患者さん 
                    夕方の予約を避け、できるだけ昼間の予約を選ぶ患者さん
                    治療への希望や基礎疾患や生活習慣を正確に話してくれる患者さん
                    きちんと歯を磨いてくれる患者さん
                    治療を中断しない患者さん
                    メインテンスに通院される患者さん

 予約を守る患者さん   きちんと予約を守る患者さんは、予約制を採用している医療機関ではどの病院や診療所でも本当に大切にされます。

複雑になる一方の現代の歯科治療において、良質な治療を保つためには、完全な予約制は避けられないものです。
高度で精密な治療になるほど、術前の念入りな準備が重要ですし、他の患者さんと重ならない独立した治療の時間枠を設ける必要があります。また高齢化社会の進行とともに、様々の基礎疾患を持つ患者さんが増加しているため、例えば午前中に血圧の上がる方、病院へ通院中の方、病院に入院中の方が抜け出して来院される場合など、患者さんがある時間帯しか通院できない場合が多々あります。乳児や小児などでは、保護者の時間的制約があるため、ある時間帯しか治療ができないことが普通です。

セラミッククラウンを製作する場合など、色を合わせるために、約束した時間に技工士さんが来院する場合もあります。そんな時に、もしその患者さんが来院されなかったならどうなるでしょうか?時間を割いて来た技工士さんは無駄足になりますし、治療中の歯が汚染されたり、仮の冠が壊れる可能性が高くなります。

つまり限られた診療時間の中に、たくさんの患者さん一人一人に応じた最適の時間枠を用意し、その中で精密な治療を行おうとするのが現代の歯科治療の姿です。

もし、その患者さんが無断キャンセルを繰り返したり、当日の直前キャンセルを繰り返す患者さんだったら、自動的にコンピューターで管理されている予約システムが、その患者さんの信頼性(リライアビリティーReliability)のランクを低く評価するため、独立した時間枠をキャンセル予備軍の患者さんに配当しなくなります。
そこで、どの医院でも、正規の予約患者さんの時間枠の他に、急患用の時間枠を用意しているのが普通ですから、予約を守らない患者さんの治療はこの急患用時間枠を使って治療することになります。しかし急患時間枠は通常短く不安定な場合がほとんどです。


結局、予約を守る患者さんの治療はスムーズに進みますが、無断キャンセルを繰り返す患者さんの治療は長期化し、仮の冠の破損や治療のやり直しが増えるため通院回数も増えてしまい、余分な歯科治療費用がかかることになります。

もちろん予想できない出来事が続くのが人生の常、歯科治療に来院できない理由は様々にあるでしょう。

そんなキャンセルを避けられない場合でも、なるべく早く事前に連絡をしていただける患者さんの評価は高くなります。

夕方の予約を避け、できるだけ昼間の予約を選ぶ患者さん 医療機関は常にどんな時刻や状況でも、患者さんの治療にベストを尽くします。

でも医師も人間。一日の診療が終わる間際になると、その日の疲れがどっと押し寄せ、集中力や注意力が低下し、心の余裕もなくなっていきます。特に歯科は細かな作業の連続です。日中の治療行為への集中度に比べ、夕方の集中度は低下しがちになります。

さらに人間の身体自体も、夕方は治療を受けるのにあまりふさわしい時間ではありません。例えば夕方になるにつれアドレナリンが上昇し、血圧、体温、心拍数も上昇します。仕事が終わった後にしか来院できない患者さんに仕方なく外科処置を行なった場合でも、循環器系への負担が大きくなりますし、後出血など不測の事態に対応することが困難になります。抜歯後の痛みや出血があって、再来院されたとしても、歯科医師会の会議や研究会や英会話教室に出かけているため医院に院長がいないことが予想されます。

また、夕方は予約も混むために、一人あたりに十分な治療時間が避けません。どうしても夕方しか来院できない患者さんの治療の進行は遅れがちになります。
お仕事の関係で、日中の来院がむつかしい人も4回に1回はご都合をつけて、太陽が顔を見せている時間帯に来院されるほうが、治療精度も進行も向上します。
治療への希望や基礎疾患や生活習慣を正確に話してくれる患者さん  百人の人がいれば百人の幸せと不幸があります。また病気は症状を抑えるだけでは不十分で、病気になる原因を取り除くことが大切です。

最近、歯科医院へ久しぶりに行った経験のある方は、初診時に詳細な自覚症状の聞き取りの他に、しつこいくらいに病歴や生活習慣を聞かれたことに驚かれたことと思います。

「昔はこんなこと聞かなかったのに‥」
「詰めた物がとれただけなのになんでこんなことまで聞くんだ」
と思われた方もいらっしゃるでしょう。

これは、現代の歯科医療の目的が『歯科疾患の治療から予防』に移っているためです。またあらゆる感染性の病気から患者さん自身と医院を守るためでもあり、糖尿病や高血圧、冠動脈疾患などの他に不安神経症や強迫神経症、うつ病や統合失調症など、様々な心身の状態を抱えた患者さんの安全を確保し、よりその患者さんにマッチした治療を行うためです。

奥歯に詰めたインレーがとれただけでも、就寝中の強い咬みしめや歯ぎしりが原因になっている場合があります。歯ぎしりや噛みしめは誰でもが行なう生理的な運動ですが、歯が極端に磨り減る原因になったり、歯が破折したり、咀嚼筋や顎関節に負担がかかっていたり、偏頭痛や耳鳴りの原因になっている場合は、その治療が必要になります。

小さな歯茎のむし歯でも、クエン酸や砂糖を含む食品の摂りすぎによる酸蝕症の場合もあり、咬みしめによるエナメル質の破折の場合もあります。

歯肉炎や歯周病でも、患者さんの服薬歴、患者さん自身が気がつかいていない境界性糖尿病などが原因の場合もあります。

歯や顎の痛みでは、その原因はむし歯や歯周病から、腫瘍や三叉神経痛まであり、正確な診断を行なうために、詳しい患者さんの情報は欠かすことができません。他科と同様に、歯科治療においても正確な診断は最も重要なステップになります。

また、歯科治療に恐怖感を抱いている患者さんは山ほどいらっしゃいます。苦手な人はその旨を我慢しないで伝えてください。プロレスラーのような体格の人でも歯科恐怖症の方はたくさんいらっしゃいます。決して恥ずかしいことではないので、最初に言ってくれれば、デンタルフォビア(歯科恐怖症)専用の治療を安心して受けることができ、患者さんも医院も両者がハッピーになれます。

費用や通院回数も治療方法、領収書の出し方も、希望があれば伝えてくださると助かります。

もっとも「主人に内緒で‥」など、家庭争議の種になりそうなご依頼はお断りすることがあります。
 きちんと歯を磨いてくれる患者さん 場合によっては、あなたの孫娘のような年齢の歯科衛生士が、歯磨きのチェックを行ないます。

「小学生じゃあるまいし、何でこの年でこんな歯磨きの練習をしなければならないんだ」

やらなくてはいけないささいなことを、実行できないのが大半の人。歯医者でもむし歯の人や入れ歯の人はたくさんいます。
でも短期間で治療効果を上げるためには、プラークコントロールは欠かせません。
再発予防のためにも。
 治療を中断しない患者さん 放っておいた人ほど、治療期間は長くなります。

1本の歯が失われれば、その影響は歯列を歪め、顎関節や咀嚼筋に悪影響を与え、残された歯のむし歯や歯周病が進み、どんどん複雑化し進行していきます。

自覚症状を消退させるだけの、表面的な治療をいくら繰り返しても、あなたの健康は決して守られません。
早ければいいのはラーメン屋さんとF1ドライバーだけです。
 メインテンスに通院される患者さん やる気のある方にはスタッフも自然に力を入れてしまいます。

いったん治療が終わっても、歯科疾患のむつかしさは再発予防にあります。

一度完全に治した後に、定期検診をしっかりと受けられることが最小の費用と手間で健康を守る方法になります。