第2回臨床研修指導歯科医講習会
2005年3月26日(土)9:00〜21:00 27日(日)9:00〜16:00
場所 松本歯科大学
主催 松本歯科大学
後援 長野県歯科医師会

本講習会は「歯科医師の臨床研修に係わる指導歯科医講習会の開催指針」(平成16年6月17日付け医政発第0617001号に基づいて開催されました。当日は長野県歯科医師会会員からは15名(うち1名欠席)、他都道府県から12名が参加しました。

本講習会の目的は以下のとおりです。
主題:「歯科医師臨床研修のカリキュラム・プランニング」
一般目標:「歯科医師臨床研修の充実化を図るため、指導歯科医が歯科臨床研修医を適切に育成するための研修プログラムを立案し実行できる能力を習得する。」

平成18年4月以降に歯科医師免許を取得した者は、開業するか、大学などで実際の臨床に携わるためには、一年間の臨床研修が義務づけられましたが、厚労省は歯科医師国家試験を受験する者と同数の研修医が研修できる施設を確保することを要求しています。

このため臨床研修の場が大学(管理型臨床研修施設)だけでは不足し、これを補完する役目を一般開業医(協力型臨床研修施設)が担う必要が生まれました。

つまり本講習会は、一般開業医を教育し臨床研修指導医を確保する目的で行なわれています。具体的には臨床研修医に良質で効果的な研修を行なうことを可能にする教育プログラム(カリキュラム)を立案、作製、実行するためのノウハウを知り、体験する目的で行なわれています。

参加した我々開業医のほとんどは、一般臨床経験は充分でも、科学的で合理的な教育を行なった経験はありません。従って、研修教育そのものに対する背景知識(内容スキーマ)をほとんど有しないため、当日教授されたアメリカ直輸入と推定される論理的、分析的、演繹的、類型的なカリキュラム製作パターンを受け入れるためには、かなり高いハードルがあると思いました。

用語のほとんどは英語を直訳したものか、その略語であり、例えば、学習全体はWS(Workshop)と呼ばれる討議で行なわれ、WSはSGD(Small Group Discussion)つまり少人数のグループ討議とPL(Plenary Session)と呼ばれる全体会議を繰り返し進められますが、このワークショップを指導するインストラクターのことをTF(Task Force)と呼びます。

経済や政治の世界ではアメリカンスタンダードがワールドスタンダードとして認知されたかのように、加速度的にグローバリゼーションが進行していますが、医療の世界でもエチオロジー(医療哲学)、医療管理学、医学教育の場でグローバリズムが席巻していることをしみじみと感じさせる講習会でした。

確かに一年間の臨床研修制度が形骸化し、有意義な教育成果が得られなければ、社会的に見て大きな損失であり、多様な資質を持った研修医の多数に国民が納得する歯科医療を行なわせるためには卒後教育の充実化は避けることができません。しかし政治・経済と異なり、はたしてアメリカの医療の現状が我々の目指すべき医療なのか、はたしてその教育が我々の規範とすべきものなのか、そのことに対し医療人は有効な検証を行って選択したのかどうか、歯科はただ医科に追従していればいいのか、多少違和感が生ずるのも無理からぬところです。

タスクフォースの皆様には、もったいなくも、教授、助教授クラスの先生方が休日返上で懇切丁寧に指導していただいたことに対して、心底より感謝しています。また当日教授していただいた様々な問題解決技法やワークショップそのものの体験、カリキュラム作製の意義や方法は自院や歯科医師会で必ずや役立たせたいと思いました。真摯に取り組まれている方々の努力が実り、臨床卒後研修が成功することを国民の一人としても大いに期待しております。