『最新オールセラミックスシステムの実力を問う』 
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学術研修の記録
 
主催:松本市歯科医師会

期日:平成17年10月27日(木)19時〜21時

場所:松本市歯科医師会会館3Fデンタルホール

講演:平成十七年度松本市歯科医師会・技工士会共催臨床座談会

『最新オールセラミックスシステムの実力を問う』

司会・座長:窪田裕一

講師:各社担当者

キーワード: AGCと水密吸着、ジルコニア、チェアサイドCAD/CAM、CAD/CAM加工センター

内容:近年、進歩・改良の著しいセラミックスシステムの現状を学ぶために、技工士会殿と企画段階から幾度も協議を行い、本座談会の開催に漕ぎつけました。各社メーカー及び販売代理店殿の全面的なご協力を仰ぎ、これから発売されるシステムをも含めた最新情報を総覧し、補綴臨床のひとつの方向性を解説できたのではないかと自負しております。

演題1『 AGCクラウンの臨床応用 』 中島豊文氏  大信貿易株式会社

 すでに臨床応用が普及している信頼性の高い安定したシステム。特徴は従来のメタルボンドが鋳造により金属冠を製作しているのに対し、99%ゴールドを模型上に塗ったシルバーラッカー層にエレクトロフォーミングすることによりガルバノクラウンを製作する点にある。適合精度が20μと優れ、明るいゴールド色がブラックマージンの解消に役立つ。その高い精度を利用して、インプラントのメゾストラクチャー、水密吸着のコーヌステレスコープなど、他社のオールセラミックシステムとの共存により新たな補綴臨床の展開が可能。
 
演題2 『セルコンで拓くスーパーブリッジワーク』豊川瑞明氏 デンツプライ三金株式会社

 平成17年10月現在、国内で15施設が導入している最新のジルコニアブリッジシステム。ジルコニア自体はコバルトクロム合金と同等の性質を持つと言われるセラミックスで、ディスクブレーキや大腿骨人工骨頭などに使われている。イットリア添加の部分安定化ジルコニアが最も高強度・高靭性(じんせい)であるため,このZrO2-Y2O3が一般にジルコニアと呼ばれる。室温における曲げ強さが800MPa以上。破壊靭性KIcは8〜12MPa/m−1/2で,耐熱衝撃温度ΔT=350℃と合金並みの性質を持つ。セルコンシステムでは加工困難なジルコニアを硬石膏程度の硬さの予備焼結段階のブロックで切削加工した後、1350度で6時間焼結し、その際起こる30%の収縮を製造ロットごとに自動補償して精度を出す。臼歯部の3ユニットブリッジまで応用可能。

演題3『セレック3によるチェアサイドCAD/CAM』増岡保治 先生  モリタ株式会社

 チェアサイドで既成のセラミックブロックから、CAD/CAMを使って、セラミックブロックから直接に修復物を削り出して、短時間でインレー、ベニア、クラウン修復物を自動的に製作する。セレック3は直接口腔内光学印象採得と設計を行う「イメージングユニット」とセラミックブロックから修復物の削り出しを行う「ミリングユニット」で構成されている。価格は約950万円で数千万円以上する他のシステムよりは安価。ただし曲げ強さは250MP程度のため接着性レジンセメントの使用を前提とする。本システムは発売以来15年以上経過し、累計で10,000台以上が販売され、臨床上の有用性は実証ずみ。 基本的にシングルクラウンまで製作可能であり今回、ラボ専用の機種も発売された。
演題4『 GN1を活用したセラミックシステム 』岡田 哲也 先生 株式会社ジーシー

 GN-1のCADシステムでは,模型や対合歯咬合面の形態をレーザー変位計で計測し,コンピュータで再現する。クラウンの設計に際しては、あらかじめ登録されている歯冠形態データベースから最適なものを選択して利用するが、デフォルトで登録されている形態の他に 、術者がその患者さん固有の歯冠データを作成し入力することも比較的簡単にできる。
CAMシステムはこの設計に基づいて硬質レジン,セラミック、VITAインセラムおよび純チタンのクラウンを設計通りに作製する。クラウン製作の場合、支台歯を約3分で計測し、CAD(設計)に10分〜20分、切削にチタンクラウンで60分、セラミッククラウンで60分〜120分かかる。一度に15本まで製作可能なので、終業前にデータ登録しておけば、出勤時に技工物が完成しているといった使い方もできる。システム総額は1375万円と高価なため、一般的な使用法としては、GN-1メジャーリングマシーンを購入した技工所が模型計測後、そのデータをGCが経営するCAD/CAM加工センターに送り製品の宅配を受けるというシステムが用意されている。VITAインセラムはオールセラミックスクラウンとして一定の評価があり、2年間2094本の破折率が0.5%というデータがある。アルミナよりわずかに強度は低下するが、VITAインセラムスピネルの審美性は特筆に値する。

感想:好む好まざるにかかわらず、メタルフリーは時代の流れ。システム導入には莫大な設備投資が必要ですが、この分野の技術進歩は早く、製品が短期間で陳腐化するために大型技工所でも導入判断は難しい。歯科医院、ラボとも優勝劣敗の流れは益々加速しています。